その場所を支配するトーナル・モーダル・コーダルな音場 (2)

前回

トーナルな音場での力学

トーナルな音場では, まず調の主音が設定される. そして主音によって, 完全5度上に上属音が, 完全5度下に下属音が設定される.

上属音は主音の上方倍音列で3番目に現れる音である. 上属音が鳴らされた時, トーナルな音場ではこの音を主音の基音(およびそのオクターブ)が欠如したものと聞くことになる. よって上属音を鳴らすと速やかに主音を聞くことを希求する. これが上属和音から主和音への進行を裏付ける理屈付けであり, またトーナルな音場での力学原則である. これは拡張すれば次のように言える; 根音が完全5度下行する進行はトーナルな音場での力学に沿っている, と.

下属音は主音の下方倍音列で3番目に現れる音である. 下属音を鳴らした場合, そこには主音が含まれることになるので関係性は認められるが, 上属音と主音の間のような関係はない. そこに見られる力学は主音へと戻らんとする(常からあるであろう)弱い欲求である.

ここの内容はJean Le Rond d'Alembert 『ラモー氏の原理に基づく音楽理論と実践の基礎』 (片山 千佳子, 安川 智子, 関本菜穂子 訳, 春秋社)の第8章による部分が大きい.